ピカデリーサーカスのマスタリング完了

 1月18日、25日にソニー・ミュージック乃木坂スタジオにて、3/21にリイシューされるピカデリーサーカスの1stアルバム『Piccadilly Circus』と2nd『Summer of Love』のマスタリング作業が完了しました。両日とも、杉真理松尾清憲のご両名立ち会いのもと、素晴らしい音に仕上がりました。1stには初公開となる1996年録音の初期デモ3曲を、2ndには2004年2月 ON AIR OSAKAでのライヴから5曲をそれぞれボーナス・トラックとしてプラスしました。ちなみに杉さんは、ライヴ音源リリースは初めてとのこと。上田雅利さんのソロ曲「Daddyはロックンロール中毒」のピカデリー・ヴァージョンや、もちろん「Never Cry Butterfly」もライヴ・テイクで聴くことが出来ます。

 これらアルバム、オリジナル発売が1999年と2003年なので、今マスタリングしても音的にはそんなに変わらないのでは?って思う方もいらっしゃるかも知れませんが、実は変わるモノなのです。マスタリングにも行った時期によって、業界内のいわば流行の音というのがあるのです。例えば80年代後半のCD草創期は、単にアナログをデジタルに変換した程度。今聴くと、音声レベルも低くて、オリジナル・アナログの方が鮮明な音がすることも多いでしょう。ところがマスタリング技術が進歩すると、音は劇的に変わることになります。それが一番顕著だったのは90年代末から2003年ぐらいの時期。音圧感を出すために、敢えて目一杯リミッターかけて全部の楽器を前に出し、エッジを効かせた感じの音が主流になりました。ピカデリーの1stも2ndも、この時期の作品なのです。今、スタジオでオリジナル・マスター・テープとCDを聴き直してみると、このCDの音圧感がかえって繊細な楽器のパートとか、音の奥行き感を阻害している感じに聞こえます。それはここ数年の主流が、リミッターかけた音圧目一杯の感じから、楽器の奥行きや歌や音のふくよかさを大事にする方向へとシフトしているからに他なりません。
 ということで、今回のピカデリーサーカスは、繊細な音もダイナミックさも両方大切にした音に仕上げました。ヴォーカルの表情がかなり豊かでふくよかになったと思います。今回担当されたマスタリング・エンジニアの安部充泰さんは、昨年リリースのシネマのベスト盤を担当された方で、偶然にもその昔、BOXの2ndエンジニアだった方。偶然とはいえ不思議な縁で、杉さんも松尾さんも驚いていました。安部さんのマスタリング、バッチリいい音に仕上がりました。3/21のリリースまで、もうちょっとお待ち下さい。
 それからアート・ワークにも拘りました。元々アナログ盤が存在しないので、新たに作る気持ちでオリジナル盤を手がけたデザイナーの冨貫功一さんに今回も作業をお願いし、何とダブル・ジャケット仕様の紙ジャケになりました。しかもブックレットは、オリジナルCD付属のものをそのまま復刻し、新たに詳細なライナーやインタビューなどを掲載したブックレットが付きます。とりあえず2/3のKENWOOD SQUARE丸の内のイヴェントで、マスタリング済みの音を初公開します。杉さんと共に爆音で聴きましょう!